研究会2009/2011

2009-2011年度 定例研究会の記録 (2009.9-2011.3)

2009-2011年度研究会テーマ
2009-10年度は、様々な異文化接触の経験を持つ外国人や研究者をお招きし、「当事者の視点からみた接触場面の変容」について考えます。また、そこから、接触場面の変容を捉えるための研究方法の可能性についても、さらに議論を深めることができればと思います。

第26回定例研究会「当事者の視点からみた接触場面の変容」
第26回定例研究会は第25回に引き続き、様々な異文化経験を持つ外国人や研究者をお招きし、当事者の視点からみた接触場面の変容について考えたいと思います。具体的には在日コリアン高齢者と90年以降に来日した中国人居住者のライフストーリーまたはライフ・ヒストリーからみた言語問題や言語管理について、それぞれの研究者からお話を伺うことで接触場面の変容への示唆を考えたいと思います。

日時:2012年3月17日(土) 14:00~16:00
場所:千葉大学 (西千葉キャンパス) 社会文化科学系総合研究棟4階 共同研究室2
講師:
1. 猿橋順子(青山学院大学)
「ライフストーリーを紡ぐ場面の言語問題とは何か:在日コリアン高齢者識字生を事例として」
文化庁が推進する地域日本語教育事業は、近年ますます実用性を志向しつつある。制度的には地域日本語教育事業の一環に位置づけられる川崎市ふれあい館の識字教室では、開設当初から多文化共生と批判的識字の観点に立った取り組みが続けられている。すなわち、識字生と識字ボランティアは相互に学び合う存在であること、ただ読み書きを体得するのではなく、非識字を生み出してきた社会歴史的な経緯に関心を払うことである。識字生は生活者として、また歴史の生き証人として、多くの知恵と経験を持った存在なのである。
特に在日コリアン高齢者については、多くの貴重な生活経験を持っていること、学校教育的な読み書き学習が適当ではないこと、老いを生きるという特有の課題をもっていることなどから、識字実践に特別の配慮が模索されてきた。そのなかで、人生を振り返り、来し方を語る、という「語りべ」の営みは、時に心的苦痛を伴いながらも、語り手(識字生)に、老いと向き合い、自身を認め、他者とつながることに意味を見出すきっかけを与えて来た。さらに、語りを通して凝縮された思いを書にすることが、一見、非常に長いプロセスを要するようでありながら、老いてなお文字を学び続けることの意義にもつながっている。
今回の発表では、識字生が生きて来た足跡を、実際に旅したプロジェクト(「在日コリアン一世の炭鉱労働を学ぶ下関:筑豊フィールドワークの旅」)を紹介し、識字活動とライフストーリーを紡ぐことの関係性を述べる。さらに、実際の語りのデータから、ライフストーリーを紡ぐ上での言語問題は何かについて、言語管理理論を援用して抽出した結果を提示し、多文化共生と批判的識字に立脚した識字活動における将来的な課題は何かについて検討していきたい。

2. 鄒暁依 (千葉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程)
「滞日中国人居住者の接触場面への参加と言語管理」
日本にいる中国人は、一般に「旧/老華僑(オールドタイマー)」と「新華僑(ニューカマー)」の二者に大別される。旧華僑は、1世の来日時期が中華人民共和国成立以前であり、日本で生まれた現在の2世・3世は生活習慣や言語など日本人と変わらない。これに対して新華僑は中華人民共和国建国後に来日した中国人のことを指している。1972年の日中国交正常化による留学生派遣が再開され、この世代の留学生のほとんどは公費派遣であり、中国の大学生・大学院生から抜擢されたエリートであった。その後、中国国内における改革開放政策や日本語学校を対象とした就学ビザの簡素化等をうけ、90年代以降、多様な目的を持つ私費留学生が増加し、留学の目的や社会的属性における均質性が大きく失われることとなった。この時期の留学生は就学期間後も就職または結婚などにより在留期間を延長して日本に在留しつづける者が増えており、在留期間の制限がない永住ビザまたは帰化を申請する人も多い。
今回紹介するのは2000年前後に私費留学で来日し、現在は日本に定住を決めた2人の「中国語母語話者」の事例である。本研究は、中国人居住者の接触場面における日本語使用を考察することを目的とする。まず、留学から定住までのライフヒストリー通じて彼女たちの言語使用についての意識を探りだす。そして、実際の接触場面での会話データを使い、居住者の日本語使用における問題やそれに対する言語管理を明らかにする。

第25回定例研究会「当事者の視点からみた接触場面の変容」
第5回目に当たる今回の研究会では、在日コリアンの言語からみた移民言語の問題と接触場面の変容について考えたいと思います。
日時:2010年12月11日(土) 14:00~16:00
場所:千葉大学 (西千葉キャンパス) けやき会館2F 会議室2
講師:金美善(国立民俗学博物館外来研究員)
講演:「在日コリアンの言語からみた日本の移民言語環境」
在日コリアンが来日しはじめて1世紀を迎えているが、いまだ一世の話す日本語については「中途半端な日本語」「中間言語」という見方が先行し、多様な日本語の一種として仲間入りしていない。逸脱を恐れる日本社会の規範主義的言語観とコリアンコミュニティの自虐的言語観が、コリアンをとりまく言語環境を支配してきたからだと考える。なお、世代交替に伴い使用言語を朝鮮語から日本語にシフトした若い世代の多くは民族語(朝鮮語)を、学校教育を通じて学習しているが、彼らの学習した朝鮮語は「直すべきウリマル(朝鮮語)」、「在日朝鮮語」などの否定的な評価がなされてきた。その評価には本国主義が背後にある。
本発表では、こうした日本社会に移民として、さらに少数者として長年生活してきた在日コリアンの言語的経験について概観し、それを通じて日本社会が抱えてきた移民言語環境について考えたい。さらにエスノレクトという概念を用いて、在日コリアンの日本語と朝鮮語の社会的位置づけへの可能性を議論できればと思う。

第24回定例研究会「当事者の視点からみた接触場面の変容」
第4回目に当たる今回の研究会では、日本に在住するフィリピン人女性の言語問題について、研究者をお招きしてお話を伺いたいと思います。
日時:2010年9月18日(土) 14:00~16:00
場所:千葉大学 (西千葉キャンパス) 文学部3号棟 (大学院棟1F) 画像情報室1
講師:
河原 俊昭(京都光華女子大学)
講演:「日本に在住するフィリピン女性の言語問題」
現在、日本には20万人ほどのフィリピン人が住んでいて、8割近くが女性である。女性の相当数は日本人の配偶者として生活をしている。彼女たちは、家族とは日本語を用い、地域に住むフィリピン人の友人たちとは、タガログ語(フィリピノ語)や現地語を用いてコミュニケーションを行っている。また英語を教えて生計の足しにしている例もある。国際結婚によって日本に在住するようになったフィリピン人女性が、これら複数の言語とどのように向かいあい、どのようなアイデンティティを抱いているか考えてみたい。

第23回定例研究会「当事者の視点からみた接触場面の変容」
第3回目に当たる今回の研究会では、香港の言語政策の歴史からみた多言語社会と接触場面の変容について、研究者をお招きして、お話を伺いたいと思います。
日時:2010年7月10日(土) 10:30~12:30
場所:神田外語大学 6号館1F プレゼンテーション・ルーム
講師:塩出 浩和(城西国際大学)
講演:「香港に於ける言語政策の歴史」
約一世紀半に及ぶ植民地(ならびに占領地)としての香港の歴史に於いて、統治当局はどのような言語政策を採用してきたのだろうか。香港市民はそれに対してどのような「反応」をしてきたのだろうか。三年八個月の日本軍政時代を含めて以上の二点について考察する。その際、隣接するポルトガル施政地域であるマカオと比較しながら議論を進めたい。中国復帰後の状況についても触れる予定。

第22回定例研究会「当事者の視点からみた接触場面の変容」
第2回目にあたる今回の定例研究会では、初の試みとして、海外出身または海外出身の両親から生まれた若い人々の言語問題を取り上げます。ベトナム出身およびベトナム人の両親を持つ大学生お二人、また、オーストラリアで現在は社会人として暮らす娘さんを育てられた研究者をお招きして、お話を伺いたいと思います。特に、年少の頃から現在に至るまでの言語使用の状況と言語意識の変化、さらに日本場面、オーストラリア場面のほか、様々な接触場面に参加する際に、どのようにインターアクションを管理してきたかについてお話を伺っていきます。
日時:2010年1月23日(土) 10:30-12:30
場所:神田外語大学 6号館1F プレゼンテーション・ルーム
話題提供者:
1. 竹内 明弘氏(国際大学大学院国際関係学研究科)
2. グエン・フィン・カム・チー氏(神田外語大学学生)
2. グエン・コン・フィ氏(大東文化大学学生)

第21回定例研究会「当事者の視点からみた接触場面の変容」
第1回目は、アジア(韓国)とヨーロッパ(ブルガリア)からの日本居住者をお招きし、来日前後の言語使用状況と言語意識の変化、また日本での様々な接触場面に参加する際に、どのように自己のインターアクションを管理しているかについてお話を伺います。また、そうした地域出身者の言語意識と言語管理の共通点と相違からは、今後の接触場面研究のあり方に対し、どのような示唆が得られるかを考えたいと思います。
日時:2009年11月28日(土) 10:30-12:30
場所:千葉大学(西千葉キャンパス) けやき会館会議室3(2F)
話題提供者:
1.澤 恩嬉(韓国出身、山形短期大学)21th_2009_sawa
2.ヨフコバ四位 エレオノラ(ブルガリア出身、神田外語大学)21th_2009_yovkoba-shii

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